170周回遅れのトップランナー(秋 2021.11.10記)

秋空の下、ドド~ン ド~ン 和太鼓が鳴り響く!飛び散る汗。江戸期の古民家「そめや」の前庭に布陣した11人の若者たち(福島県立塙工業高校和太鼓部)の演奏です。
 ニワトコ(庭常)の仲間たちは、地元の歴史・文化の継承を大切にしています。ことあるごとに「伝統とは」という宿題をかかえて活動中なのです。
 昔から林業と農業に支えられながら、奥州の玄関口として人々の往来を見続け、古代・中世時代から為政者の覇権争いにも耐えてきた美しい里山の風景が自慢の地域。福島県南に位置し、縄文土器も出土しているくらいですから歴史が長いのです。
 紐とくに古民家「そめや」は、少なくとも170年前の江戸期から明治に至るまで藍染めと蒟蒻(こんにゃく)を生業とし、水郡線沿線に今も残るいくつかの“こんにゃく御殿”のひとつと認識されています。
 こんにゃくは、隣の水戸藩(茨城県)の財政を支えていた主要な農産物。県境にあるこの地域もご多分にもれずこんにゃく栽培で潤ってきたはずです。
 「伝統とは、文化とは」を問いながら想います。江戸という時代が生んだ古民家の「贅沢な細工」、こんにゃくに代表される「食」など、突き詰めればそこに庶民の憧れや美味しいがあったからこそ、伝統として生き残ってきたのではないかと。それらは現代に生きる私たちへの贈り物といえます。私たちは、170周回遅れのトップランナーとして、継承していこうとしています。
ちなみに、11月6〜7日の2日間にわたり「そめや」で「1日レストラン」を実施。東京からのお客様と地元のお客様に向けて、フレンチの昼膳でのおもてなし。地元食材とフランス大使館総料理長セバスチャン・マルタン氏とのコラボレーションで、「美味しい!」が座敷いっぱいに広がりました。
新幹線の中で小腹が空くはずと、手土産に小さなお弁当「こじはん」をお渡ししました。昼食と夕食の間の軽い食事のことをいいます。田んぼや畑で働く家族の「こじはん」は、風呂敷に包んだり背負いカゴに入れて運ぶのが、昔の子どもたちの役割でした。